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HPFポートフォリオレビューグランプリ|中西敏貴さんからの受賞コメント

HPF2022 ポートフォリオレビュー

 

中西敏貴


今から15年ほど前のこと。僕はまだ大阪にいて、仕事をしながら写真を撮っていました。 ある時、知人からの誘いで東川町で開催されていたポートフォリオレビューに参加すること にしたのですが、レビューに参加するのは初めて。どのようにプレゼンしたらよいのか、そ もそもどんな写真を持っていけばいいのかと格闘し、当日を迎えました。結果は惨敗。「こ の写真は三脚を立てれば誰でも撮れますよね。ただ美しいだけで何も伝わってこない。」と いう趣旨のコメントだけが、記憶に残るレビューとなりました。


その数年後、北海道に移住し、プロとしての活動をスタートさせることになりました。大阪 生まれの僕が抱いていた北海道のイメージは、おおらかで美しい自然でしたから、移住後は そういった写真に邁進し、それが幸いにも仕事に直結するようになっていきました。一方 で、少しずつ心情の変化も起こり始めます。北海道の自然や風景を知るうち、土地の成り立 ちについても興味が拡張していくようになったのです。



10数年前の東川での苦い経験以降、自然をモチーフとした写真でどのように道を切り開い ていけば良いのかを模索していた僕にとって、その意識変化は新しいシリーズに取り組む きっかけとなっていきました。コロナ禍で仕事が減ったことが、シリーズに集中できる余裕 に繋がったことは皮肉ですが、ウクライナへロシアが侵攻したことは、シリーズのコンセプ トにも大きな影響を及ぼしました。


それら一連の作品を、どのように世に送り出していけば良いのかについて考えていた頃、 HPF2022のポートフォリオレビューがリアルで開催されることを知りました。あの時の苦 い経験をもうしたくない。けれど、この作品をどうにかして世に出したい。その葛藤を繰り 返し、最後は決意を持って望むことにしました。



レビュアーの方々は、僕がプロであるという事実とは関係なくレビューしてくださったように思います。この作品群がどのような意味を持ち、どこへ向かえばよいのかについて、的確 にアドバイスをいただくことができました。幸いにもグランプリをいただくことができましたが、作品に足りない部分を指摘いただけたことがなによりもありがたく、このレビューを 通して道が開けたように思います。今回の受賞はスタートラインに過ぎません。グランプリ の名に恥じぬよういい作品を完成させ、しっかりと世に送り出したいと、思いを新たにしま した。

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