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HPF体験記② 辻悠斗

HPF体験記〜雷を受けたような衝撃〜



私が初めてHPFに参加したのは19歳の時、2回目の開催の時だった。

高校生の時は写真甲子園に出たりもしていた普通の写真好きな青年だった。写真家の立木義浩さんに噛みつきまくった挙句、趣味としてではなく作家として写真を続けると宣言したものの、これからどうやって写真を学べばいいんだろうと悩んでいた。


そんな時、先輩からHPFが開催されるから参加してみたらと言われたのがきっかけだった。そして言われるがままにポートフォリオレビューに申し込んだ。人生初のポートフォリオレビューである。


先輩から貰ったプリント用のボックス、シュルレアリズムなのかも怪しい写真とグダグダの怪文を抱えて参加した。緊張で頭の中は真っ白。いや、当時は写真について考えることをしていなかったので空っぽなのが正解である。

初めてのレビューは惨敗。というか見せるのも申し訳ないレベルだった。完全に青年の写真人生相談の会になっていた。レビュワーの方々もお金払って参加しているからなんか言ってあげないとなぁ…といった様子だった。もっとストイックに写真やらないとだめだよと言われたのを覚えている。元々写真に対して真面目に向き合っていたつもりでいただけに衝撃を受けた。命をかけて写真と向き合わねばいけないと強く思った。

そもそも「高校生写真」と飯沢耕太郎の「私写真論」金村修とタカザワケンジの「挑発する写真史」しか知らないので今後自分が何をやっていきたいか、写真で何をしたいかなんて考えられなかったが、時間をかけて考えていく必要があると感じた。


写真に対する知識がないことが情けなさすぎて帰りのバスの中で写々者で取り扱っていた中平卓馬「氾濫」金村修「GermanSuplex」横田大輔「Room」鈴木清「新刊天幕の街」を注文した。今思うと我ながらいいセンスをしているなと思う。そこから写真集買い集め病に罹ったのは言うまでもない。


写真集買い集め病に罹ったものの、良い事もあった。作家仲間がたくさんできたのだ。

レビュー以外でも他の参加者の写真を見せてもらったり、自分の写真を見てもらった。会期が終わる頃には知り合いがいっぱい増えていた。しかも志も作品のレベルも高い方々ばかりだ。自分もしっかりせねばと気合が入る。今では定期的に勉強会を開催していたりする。というか私の作家仲間の半分以上はHPFで知り合ったと言っても過言ではない。


それと、レビューを受けてから写真についてもの凄く考えるようになった。写真史と自分の写真の立ち位置とか、写真である必要性、言語化すること、文章についてなど。

同時に色んなことにも取り組んだ。レビューで幅広い写真作品を見たこと、写真史について学んだことで自分の写真の許容範囲が広くなった。コラージュでロール紙に出力して展示したプリントを切り刻んで手製本を作ったり、電柱を撮ったり、スクショを取り入れたりストリートスナップと加工もした。結局のところストレートフォトが好きなのだと気づいて今は全く別の写真を撮っている。


今年のどこかのタイミングでとあるパブリッシャーとZINEを作るのと12月に東京で個展を開催する。まだまとまっている状態とは言えないが、これまで自分の意識にあった写真行為と自己、他者とネットワークみたいなものを「家の庭」と称して発表するつもりだ。発展途上ではあるが、これから作り上げていく庭の一部分になるだろうと確信している。


気がつけば深い写真の世界に入ってしまったが、それは必然だったのかもしれない。常に自分は甘いと思いながら写真を撮ってテキストを書く日々を過ごしている。とにかく考えて写真を撮るしかないのだ。


本気で写真をやる意志があるのならHPFに参加してみるのを強く勧める。


辻悠斗







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